
長崎で「夏涼しく冬暖かい家」をつくるには?|長崎で重要な高断熱・高気密住宅の考え方
2026.06.18

目次
結論:「日射のコントロール」と「断熱・気密」の両立で実現できる
夏は日射を遮り熱を逃がしやすく、冬は日射を取り込み熱を逃がさない。この一見矛盾する要求は、庇の深さや窓の配置による日射コントロールと、断熱・気密・計画換気を組み合わせることで、両立させることができます。
この記事の執筆者
三浦 恭輔(MIURAHOME 取締役部長・営業部)
大学院卒業後、都内の設計事務所に勤務し、2023年にMIURAHOMEへ入社。設計事務所でのデザイナー経験を活かし、「美しい空間」「住みよい性能」「安心なライフプラン」の提案を行う。長崎県諫早市を拠点に、パッシブハウス基準の高断熱・高気密住宅を専門に手がける。
はじめに
鎌倉時代の随筆「徒然草」には、
「家の作りやうは、夏をむねとすべし」
という有名な一節があります。
「冬はどんな場所でも、
火をたいたり厚着をすれば暮らせるが、
暑い時期の住まいが悪いのは、
耐え難い」という意味です。それだけ、日本の夏の厳しさが昔から意識されてきたことがうかがえます。
昔は、
夏と冬、どちらかを優先せざるを得ませんでした。
しかし現代の住宅技術では、
両方を実現することが、可能になっています。技術の進歩が、私たちの暮らしの選択肢を広げてくれたともいえます。
夏と冬で「真逆」の要求がある
住宅に求められる性能は、
夏と冬で、正反対になります。
- 夏:日射を遮り、室内の熱を逃がしたい
- 冬:日射を取り込み、室内の熱を逃がしたくない
この矛盾する要求に、
どう応えるかが、
「夏涼しく冬暖かい家」を実現するカギです。どちらか一方だけを優先すると、もう一方の季節で不満が残る家になってしまいます。
カギは「太陽高度」の違い

実は、
夏と冬では、
太陽の高さ(角度)が異なります。
夏は太陽が高い位置を通り、
冬は太陽が低い位置を通ります。
この違いを利用すれば、
「深い庇」を設けるだけで、
- 夏:高い位置から差し込む日射を遮る
- 冬:低い位置から差し込む日射を取り込む
という、
一見矛盾する要求を、
同時に満たすことができます。
窓の配置も重要な要素
南面の窓は、
庇でコントロールしやすいのですが、
東西面の窓は、
朝夕の角度の低い日差しが入りやすく、
庇では遮りにくいため、
夏の暑さの原因になりやすい部位です。
大きな窓を南面に集中させ、
東西面は控えめにするという設計も、
「夏涼しく冬暖かい家」に近づく、
有効な工夫です。窓の大きさと配置は、間取りの快適性と性能の両方に関わる、設計の要といえます。
庇だけでなく「外部シェード」という選択肢
庇を深くすることが難しい部分や、
窓の大きさによっては、
庇だけで日射を十分に遮れないこともあります。
そうした場合に有効なのが、
外付けブラインドなどの、
「外部シェード」です。
室内側のカーテンやブラインドは、
日射がガラスを通過した後に遮るため、
熱そのものは、
すでに室内に入り込んでしまっています。
一方、外部シェードは、
日射がガラスに到達する前に遮るため、
より効果的に、
夏の暑さを防ぐことができます。
断熱・気密という「土台」があってこそ
日射計画だけでは、
不十分です。
断熱性能が低ければ、
夏に取り込んでしまった熱も、
冬にせっかく取り込んだ日射熱も、
すぐに逃げてしまいます。
気密性能が低ければ、
隙間から熱や湿気が出入りし、
日射計画の効果を、
十分に活かせません。設計上の工夫を、施工の精度が裏切ってしまうこともあるのです。
日射計画と、
断熱・気密は、
セットで考える必要があります。
計画換気が果たす役割
夏は、
室内で発生する湿気や熱を、
計画的に排出することが重要です。
冬は、
熱交換率の高い換気システムによって、
室内の暖かさを保ちながら、
新鮮な空気を取り入れることができます。季節を問わず快適な空気環境を保つには、こうした換気の仕組みも欠かせません。
MIURAHOMEの考え方
MIURAHOMEでは、庇を90cm〜1.2mとできる限り深く設け、窓は樹脂枠・日射遮蔽型トリプルガラスを南面中心に配置し、東西面は基本的に採用しません。この日射計画に、断熱性能「UA値0.35以下(最低ライン)/0.26以下(推奨)」、気密性能「C値0.19以下」を組み合わせることで、「夏涼しく冬暖かい家」を実現しています。
換気は熱交換率80%以上の第一種熱交換換気(Zehnder製)を採用し、季節を問わず快適な空気環境を保てるよう設計しています。数値だけでなく、実際の暮らしの体感としての快適さを大切にしています。

まとめ
「夏涼しく冬暖かい家」は、
決して矛盾した願いではありません。
庇の深さや窓の配置による、
日射のコントロールと、
断熱・気密・計画換気を、
組み合わせることで、
長崎でも十分に実現可能です。古典の時代とは違い、私たちは選択せずに済む時代に生きています。
よくある質問
庇があれば、夏も冬も日射をコントロールできますか?
夏と冬では太陽の高さ(角度)が異なるため、適切な深さの庇を設けることで、夏の高い位置からの日射を遮り、冬の低い位置からの日射を取り込むことができます。ただし東西面の窓は庇では遮りにくいため、配置の工夫も重要です。
日射計画だけで、夏涼しく冬暖かい家になりますか?
日射計画だけでは不十分です。断熱性能が低いと熱がすぐに逃げてしまい、気密性能が低いと隙間から熱や湿気が出入りしてしまいます。日射計画と断熱・気密はセットで考える必要があります。
東西面に窓があると、夏涼しい家は難しいですか?
東西面の窓は朝夕の角度の低い日差しが入りやすく、庇では遮りにくいため注意が必要です。ただし小さめの窓にする、シェードを活用するなどの工夫で対策することも可能です。
徒然草の時代と今では、何が違うのですか?
徒然草の時代は、断熱・気密・日射計画といった技術がなく、夏を優先せざるを得ませんでした。現代では、これらの技術を組み合わせることで、夏と冬の両方に対応した住まいをつくることが可能になっています。
外部シェードと室内カーテン、どちらが効果的ですか?
外部シェードの方が効果的です。室内側のカーテンやブラインドは日射がガラスを通過した後に遮るため、熱そのものはすでに室内に入り込んでいます。外部シェードは日射がガラスに到達する前に遮るため、より効果的に暑さを防げます。
すだれやオーニングでも代用できますか?
すだれやシェード、オーニングも、外部で日射を遮るという意味では有効な選択肢です。コストや見た目の好みに応じて、外付けブラインドと使い分けることも可能です。
断熱性能について、もっと詳しく知りたい方へ
MIURAHOMEでは、日射計画と性能を組み合わせた設計を実際にご説明する完成見学会・個別相談を随時受け付けています。
お気軽にご相談ください。
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参考文献
本記事の作成にあたり、以下の情報を参照しました(すべて2026年8月時点で確認)。
- 吉田兼好「徒然草」第五十五段
- 国土交通省 建築物省エネ法における外皮性能・日射に関する資料
- MIURAHOME 社内施工基準