
なぜ高性能住宅では「気密測定」が必要なのか?|長崎で重要な高断熱・高気密住宅の考え方
2026.07.26

目次
結論:気密測定は「施工品質を数字で証明する」唯一の手段であり、設計上のC値だけでは実際の性能は保証できない
「うちはC値0.5を目指して設計しています」という説明を受けたことはありませんか。しかし、設計上のC値と、実際に建った家のC値は、必ずしも同じ数字にはなりません。今回は、その理由と気密測定の本当の意味を解説します。
この記事の執筆者
三浦 恭輔(MIURAHOME 取締役部長・営業部)
大学院卒業後、都内の設計事務所に勤務し、2023年にMIURAHOMEへ入社。設計事務所でのデザイナー経験を活かし、「美しい空間」「住みよい性能」「安心なライフプラン」の提案を行う。長崎県諫早市を拠点に、パッシブハウス基準の高断熱・高気密住宅を専門に手がける。
はじめに
住宅会社のカタログや資料には、よく「設計C値」という数字が載っています。
これは、図面上の仕様をもとに計算された、あくまで理論上の気密性能です。
しかし、この数字はあくまで「計算上こうなるはず」という予測にすぎません。
実際の性能を知るには、完成した建物そのものを測定する必要があります。
この記事では、なぜ設計値と実測値にズレが生じるのか、そして気密測定が果たす本当の役割について解説します。
設計上のC値と、実際のC値はなぜ違うのか
住宅は、工場で均一に大量生産される製品ではありません。
現場で一つひとつ丁寧に組み上げられる、いわば手づくりに近い構造物です。
そのため、同じ設計図であっても、施工する職人の技術やその日の天候、現場管理の丁寧さによって、仕上がりに差が生まれます。
特に、配管やコンセントボックスまわり、気密シートの重ね方、サッシと躯体の取り合い部分などは、隙間が生じやすい代表的なポイントとして知られています。
これらは図面だけでは管理しきれず、現場の施工品質がそのまま数字に表れます。
たとえば、気密シートの重ね幅がわずか数センチ足りないだけでも、そこから空気が漏れる経路になってしまいます。
こうした細部の積み重ねが、最終的なC値の数値に大きく影響を与えます。
つまり、同じ設計図・同じ断熱材を使っていても、施工する会社や現場監督の管理体制によって、実際のC値には大きな差が生まれるということです。
だからこそ、「設計上は高性能」という説明だけでは、本当の性能を保証したことにはなりません。
気密測定でわかる3つのこと
気密測定は、単に「良い数字が出るかどうか」を確認する作業ではありません。
測定を通じて、次の3つのことが明らかになります。
1つ目は、施工精度の裏付けです。数値として結果が出ることで、目に見えない部分の施工品質を客観的に証明できます。
これは、施主にとって大きな安心材料になります。
2つ目は、隙間の場所の特定です。気密測定と合わせてサーモグラフィーカメラなどを併用すると、どこから空気が漏れているかをある程度絞り込むことができます。
3つ目は、換気計画の妥当性確認です。気密性能の実測値がわかることで、計画換気が設計通りに機能するかどうかを判断する材料になります。
これら3つは、いずれも「住んでから初めて分かる」性質のものです。
完成してからでは確認しづらいからこそ、建築中・完成時のタイミングで数値として残しておく価値があります。
測定結果は、いわば住宅の「品質証明書」のような役割を果たします。

気密測定をしない住宅会社もある理由
気密測定を全棟で実施している住宅会社は、決して多くありません。
測定には手間と費用がかかるうえ、悪い数値が出た場合には施工のやり直しが発生することもあります。
そのため、測定を避けたいという事情を持つ会社が存在するのも事実です。
この点については、別のコラムでも詳しく取り上げていますので、あわせてご覧ください。
住宅会社を選ぶ際は、「気密測定を実施していますか」と直接質問してみることをおすすめします。
その回答の仕方からも、性能に対する姿勢がある程度見えてきます。
性能への自信は、言葉の説明だけでなく、実際の測定データという形で示すことができます。
「全棟で実施し、結果を必ずお渡ししています」と即答できる会社であれば、施工品質に対する自信の表れと考えてよいでしょう。
逆に、質問に対してあいまいな回答しか返ってこない場合は、注意が必要かもしれません。
MIURAHOMEの考え方
MIURAHOMEでは、全棟で気密測定を実施し、C値0.19以下という数値を実測ベースで確認しています。
設計上の数値だけを提示するのではなく、完成した建物ごとに実測結果をお客様にお伝えしています。
見えない部分だからこそ、数字で証明することにこだわっています。
測定は中間段階と完成後の2回実施し、万が一数値が基準に届かない場合は、隙間の箇所を特定したうえで補修を行います。
補修後には必ず再測定を行い、基準をクリアしたことを確認してから引き渡しています。
こうした一連の工程を経ることで、お客様には根拠のある数字とともに完成した住宅をお渡しできます。
この工程を省略せずに続けることが、長期的な信頼につながると考えています。

まとめ
設計上のC値は、あくまで理論上の数値です。
実際の性能を証明できるのは、完成した建物を測定した実測値だけです。
住宅会社を選ぶ際は、「設計値」ではなく「実測値」を全棟で公開しているかどうかを、ぜひ確認してみてください。
気密測定は、決して特別で大げさな工程ではありません。
むしろ、施工品質に自信のある会社であれば、ごく当たり前のように実施している工程です。
数字という客観的な根拠を、ぜひ住宅会社選びの判断材料にしてみてください。感覚的な説明だけに頼らず、実測データを確認する習慣を持つことをおすすめします。
よくある質問
Q1. 気密測定はいつ行われますか?
気密シートなどの施工が完了した中間段階と、完成後の最終段階の2回で実施するのが一般的です。中間段階で行うことで、仕上げ工事が終わる前に補修対応がしやすくなります。
Q2. 測定結果が悪かった場合はどうなりますか?
隙間の多い箇所を特定し、シーリングや気密テープでの補修を行ったうえで再測定を行います。基準を満たすまでこの工程を繰り返すことが理想的です。
Q3. 気密測定にはどのくらいの費用がかかりますか?
住宅会社によって異なりますが、標準仕様に含まれている場合と、オプション扱いの場合があります。契約前に、標準仕様として含まれているかどうかを必ず確認しておくと安心です。
Q4. 測定結果はどのように受け取れますか?
多くの場合、測定機関から発行される報告書としてC値やその他の数値が記載された形で提供されます。引き渡し時に施主控えとして受け取れるかどうかも、事前に確認しておくとよいでしょう。
Q5. 自分で気密測定を依頼することはできますか?
第三者機関に個人で依頼することも可能ですが、住宅会社の協力が必要になる場合が多いため、事前の相談をおすすめします。契約前の段階から測定の可否について確認しておくとよいでしょう。
関連コラム
参考文献
- 国土交通省「住宅の気密性能に関する基準」
- 一般社団法人 日本サステナブル建築協会 関連資料
- 一般社団法人 新住宅性能等表示制度 関連資料