
除湿機に頼る前に考えたい「家そのものの湿気対策」|長崎で重要な高断熱・高気密住宅の考え方
2026.08.11

目次
結論:除湿機は湿気という「結果」に対する対症療法にすぎず、気密・断熱・換気という住宅性能を整えることが、湿気を根本から抑える原因療法になる
梅雨や夏場、押し入れやクローゼットの湿気対策として、除湿機を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。もちろん除湿機は有効な道具です。しかし、それだけに頼ることには限界があります。今回は、除湿機と住宅性能、それぞれの役割について整理します。
この記事を書いた執筆者について
三浦 恭輔(MIURAHOME 取締役部長・営業部)
大学院卒業後、都内の設計事務所に勤務し、2023年にMIURAHOMEへ入社。設計事務所でのデザイナー経験を活かし、「美しい空間」「住みよい性能」「安心なライフプラン」の提案を行う。長崎県諫早市を拠点に、パッシブハウス基準の高断熱・高気密住宅を専門に手がける。
除湿機は「対症療法」である
除湿機は、室内にすでに存在してしまっている湿気を、あとから取り除くための道具です。
スイッチを入れればすぐに効果を実感できるため、日々の湿気対策として非常に頼りになる存在です。
しかし、これはあくまで「今そこにある湿気」を処理しているにすぎず、なぜ湿気が発生・侵入するのかという根本原因には対処できていません。
たとえるなら、風邪の症状を熱冷ましで一時的に抑えるようなものです。体の中にあるウイルスという原因そのものを取り除いているわけではないのです。
除湿機だけに頼れない3つの理由
除湿機を湿気対策の主役にしようとすると、いくつかの現実的な壁にぶつかります。
1つ目は、電気代がかさみ続けることです。梅雨から夏にかけて長時間稼働させ続けると、電気代は決して無視できない負担になります。
2つ目は、設置できない部屋が生まれることです。押し入れや床下収納など、除湿機を置けない、あるいは置きにくい場所には、その効果は及びません。
3つ目は、湿気の「侵入源」そのものは解決しないことです。壁の隙間や床下から湿気が侵入し続ける限り、除湿しても次から次へと湿気は補充されてしまいます。

湿気はどこから来るのか
住宅内の湿気は、大きく分けて2つの経路から発生し、侵入してきます。
1つは、室内で発生する湿気です。呼吸や汗、調理、入浴、洗濯物の部屋干しなど、日常生活そのものから絶えず湿気は生まれ続けています。
もう1つは、外部から侵入する湿気です。気密性能が低い住宅では、壁や床下のわずかな隙間から、湿った外気が室内へじわじわと入り込んできます。
除湿機が主に対処できるのは、前者の「室内で発生した湿気」です。後者の「外部から侵入し続ける湿気」については、住宅の気密性能そのものを高めない限り、なかなか根本的な解決にはなりません。
つまり、いくら除湿機を稼働させても、隙間から湿気が入り続ける住宅では、いたちごっこが続いてしまうのです。
特に梅雨時や台風シーズンなど、外の湿度そのものが高い時期には、この「侵入し続ける湿気」の影響がより顕著に表れます。除湿機の設定を強めても、なかなか湿度が下がらないと感じたことがある方もいるのではないでしょうか。
これは除湿機の性能が低いのではなく、住宅の気密性能という土台の問題であるケースが少なくありません。
住宅性能でできる「原因療法」
湿気を根本から抑えるためには、気密性能・断熱性能・換気計画という3つの住宅性能が、それぞれ重要な役割を果たします。
気密性能が高ければ、外部からの湿気の侵入そのものを、日常的に大幅に減らすことができます。
断熱性能が高ければ、壁内や床下の温度差が小さくなり、結露による湿気の発生もかなり抑えられます。
計画換気が適切に機能していれば、室内で発生した湿気も、除湿機にわざわざ頼らずとも継続的に排出されていきます。
この3つが揃っていれば、除湿機はあくまで「補助的な道具」として、ここぞという場面でだけ使えばよい存在になります。
逆に言えば、気密・断熱・換気のいずれかに弱点がある住宅では、どれだけ高性能な除湿機を導入しても、根本的な解決には至りません。買い替えを検討する前に、まず住宅性能そのものを見直す視点が必要です。
MIURAHOMEの考え方
MIURAHOMEでは、C値0.19以下の高い気密性能、基礎外断熱、熱交換率80%以上の第一種換気システムを標準採用し、湿気を「発生させない・侵入させない・溜め込まない」住まいづくりを行っています。
押し入れやクローゼットまで含めた家全体の空気の通り道を設計段階から考えることで、湿気がこもりやすい場所そのものを着実に減らすことを大切にしています。
除湿機を一切否定するわけではありませんが、まず住宅性能という土台を整えたうえで、必要に応じて補助的に使っていただくことをおすすめしています。
お客様からは「以前の家では除湿機が手放せなかったが、今はほとんど使わなくなった」というお声をいただくこともあります。これは、湿気の発生源・侵入源そのものが減った結果だと考えています。
住宅性能によって湿気の悩みが軽くなれば、除湿機にかけていた電気代や手間も、自然と減らしていくことができます。

まとめ
除湿機は、目の前の湿気に対する即効性のある対症療法です。
一方、気密・断熱・換気という住宅性能は、湿気の発生や侵入そのものを抑える原因療法にあたります。
湿気対策を検討する際は、除湿機を買い足す前に、住まいそのものの性能に目を向けてみることをおすすめします。
対症療法と原因療法、両方の視点を持つことが、長く快適に暮らせる住まいづくりにつながります。
住宅会社を選ぶ際は、「除湿機を置く場所」を心配するのではなく、「除湿機がいらないくらい湿気の少ない家かどうか」という視点で確認してみることをおすすめします。
よくある質問
Q1. 除湿機はまったく必要ないのでしょうか?
そうではありません。梅雨時の集中的な除湿や来客前の一時的な調整など、補助的な用途では十分に役立ちます。住宅性能という確かな土台の上で活用するのが理想です。
Q2. 気密性能を高めれば結露はゼロになりますか?
完全にゼロにはなりませんが、発生頻度や程度を大幅に抑えることができます。断熱性能や換気計画とあわせて考えることで、より効果的な対策になります。
Q3. 押し入れやクローゼットの湿気対策はどうすればよいですか?
除湿剤の使用に加え、扉に通気口を設けるなど、空気が滞留しない設計にすることが効果的です。新築時であれば、こうした配慮を設計段階から組み込んでおくことが特に重要です。
Q4. 既存住宅でも気密性能を高めることはできますか?
大掛かりな改修が必要になる場合が多いですが、窓まわりや床下の部分的な気密補修で改善できるケースもあります。まずは専門家に相談してみてください。
Q5. 湿度が高いとどんな問題が起きますか?
カビやダニの発生リスクが高まり、建材の劣化にもつながります。健康面・住宅の耐久性の両面から、日頃から適切な湿度管理を意識することが重要です。
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参考文献
- 国土交通省「住宅の省エネルギー基準に関する資料」
- 一般社団法人 日本サステナブル建築協会 関連資料
- 厚生労働省 室内空気質に関する資料