
住宅ローンより怖い?35年間払い続ける「光熱費」の話|長崎で重要な高断熱・高気密住宅の考え方
2026.07.08

目次
結論:住宅ローンは35年で終わるが、光熱費は一生終わらない
住宅ローンには「完済」という終わりがありますが、光熱費には終わりがありません。断熱・気密性能の違いは、35年間で200万円以上、電気代の値上がりや、ローン完済後も住み続ける45年間まで見込めば、700万円以上の差になります。
この記事の執筆者
三浦 恭輔(MIURAHOME 取締役部長・営業部)
大学院卒業後、都内の設計事務所に勤務し、2023年にMIURAHOMEへ入社。設計事務所でのデザイナー経験を活かし、「美しい空間」「住みよい性能」「安心なライフプラン」の提案を行う。長崎県諫早市を拠点に、パッシブハウス基準の高断熱・高気密住宅を専門に手がける。
はじめに
家づくりの相談では、
「住宅ローンをいくら借りられるか」
という話が中心になりがちです。
しかし住宅ローンは、
35年(あるいはそれ以下)で完済すれば、
支払いが終わります。
一方、光熱費は、
その家に住み続ける限り、
一生払い続けるお金です。
この記事では、
住宅性能によって光熱費がどれだけ変わるのかを、
気象データや実際の電気料金プランに基づいて試算し、
35年・45年という時間軸で比較しました。
住宅ローンには「終わり」があるが、光熱費にはない
住宅ローンは、
35年間支払えば完済し、
それ以降の負担はなくなります。
しかし光熱費は、
ローンを完済した36年目以降も、
その家に住み続ける限り発生し続けます。
断熱・気密性能が低い家を選んでしまうと、
「ローンは終わったのに、
光熱費の負担は変わらず重い」
という状態が、
何十年も続くことになります。
性能クラス別に、年間電気代を試算した

同じ延床面積(25坪)・同じ長崎の気候条件で、
断熱性能(UA値)と換気方式だけを変えた場合の、
年間電気代を試算しました(太陽光・蓄電池なし)。
- ①ローコスト住宅(UA値0.87、熱交換換気なし):年間215,449円
- ②標準クラス(UA値0.60、熱交換換気なし):年間193,730円
- ③ハイクラス(UA値0.46、国産熱交換換気70%):年間177,392円
- ⑤パッシブハウス水準(PHPP基準の年間暖房需要15kWh/㎡a・冷房需要23kWh/㎡a):年間156,756円
①と⑤の差は、
年間で58,693円。
1年だけ見ると、
「その程度か」と感じるかもしれません。
電気代は「上がり続けている」という前提で見る
この試算をさらに現実的にするために、
電気料金の値上がりも織り込みます。
総務省統計局の消費者物価指数(電気代)によると、
2005年から2025年までの20年間で、
指数は80.2から118.1へ、
約47%上昇しています。
しかも直近5年(2020〜2025年)は、
年率約3.4%、
直近4年では年率約4.2%と、
長期平均よりも明確に上昇ペースが加速しています。

この直近の実績を踏まえ、
年4%の上昇シナリオで、
45年間の累計額を試算しました。
45年間で見ると、差はここまで広がる

直近4年の上昇ペース(年率約4%)を織り込んだ、
45年間累計では、
次のような金額になります。
- ①ローコスト住宅:約2,607.6万円
- ②標準クラス:約2,344.7万円
- ③ハイクラス:約2,147.0万円
- ⑤パッシブハウス水準:約1,897.2万円
①と⑤の差は、
45年間で約710万円です。
「ローンを払い終えたら、家にかかるお金は減る」
というイメージとは裏腹に、
性能の低い家では、
完済後も重い光熱費負担が、
そのまま続いていきます。
太陽光・蓄電池を載せると、どう変わるか
同じ8.8kWの太陽光発電・9kWhの蓄電池を、
①〜⑤すべてに搭載した場合も試算しています。
売電単価は、
FIT制度を使わない一般的な売電単価の目安として、
8円/kWh(固定)を採用しました。
横ばい試算(電気代が上がらない前提)では、
③・⑤クラスは、
35年間で売電収入が電気代を上回り、
黒字になるという結果が出ています。
ただし電気の購入単価だけが年3〜4%で上昇し、
売電単価が固定のままだと仮定すると、
黒字は徐々に縮小し、
性能の低いケースではやがてプラス(負担)に戻ります。
それでも太陽光・蓄電池を搭載しない場合と比べると、
①〜⑤のすべてで大幅なコスト削減効果が見込めます。

なお、この試算には太陽光パネル・蓄電池本体の導入費用や、
パネルの経年劣化、
蓄電池の交換費用(一般に10〜15年で交換が想定されます)は含まれていません。
パッシブハウス水準(⑤)に太陽光・蓄電池を搭載したケースを例に、
電気代上昇シナリオごとの収支を整理すると、
次のようになります。
| シナリオ | 期間 | 正味の電気代収支 |
|---|---|---|
| 横ばい試算 | 35年間 | ▲46.7万円(黒字) |
| 年3%上昇 | 35年間 | 12.2万円(負担) |
| 年3%上昇 | 45年間 | 50.3万円(負担) |
| 年4%上昇 | 45年間 | 116万円(負担) |

電気代が横ばいなら黒字ですが、
売電単価が固定のまま購入単価だけが上がり続けると、
太陽光・蓄電池を搭載していても、
長期的には負担に転じる可能性がある、
という点も正直にお伝えしておきます。
それでも太陽光なしのケース(35年間で548.6万円)と比べれば、
はるかに小さな負担で済んでいます。
この試算の裏側にあるもの
この試算は、
単純な「夏の電気代を12倍する」ような概算ではありません。
- 気象庁の長崎における月別平年気温データをもとに、日々の気温変化まで再現
- 実際の電気料金プラン(時間帯別料金)の単価体系を反映
- 窓の面積・方位・庇・外付けブラインドによる日射熱取得も個別に計算
- 気密性能(C値)による隙間からの熱損失も反映
という積み上げ計算を行っています。
なお、外皮面積比や一部の日射量の仮定値など、
出典が確定していない実務的な仮定も一部含まれており、
今後さらに精度を高める余地があります。
MIURAHOMEの考え方
MIURAHOMEでは、断熱性能「UA値0.35以下(最低ライン)/0.26以下(推奨)」、気密性能「C値0.19以下」を標準とし、熱交換率80%以上の第一種熱交換換気(Zehnder製)を組み合わせることで、住み始めてからの光熱費を長期的に抑える設計を行っています。
住宅ローンという「35年で終わる負担」だけでなく、光熱費という「一生続く負担」まで含めて、家づくりをご提案しています。

まとめ
住宅ローンには、
35年という「終わり」があります。
しかし光熱費には、
終わりがありません。
断熱・気密性能の差は、
電気代の値上がりを織り込むと、
ローン完済後も住み続ける45年間で、
700万円以上の差になります。
「毎月の返済額」だけでなく、
「ローンを払い終えた後の暮らし」まで見据えて、
住宅性能を選んでほしいと思います。
よくある質問
この試算は、どの地域を想定していますか?
長崎の気候データ(気象庁の月別平年値)をもとに試算しています。地域によって暖房・冷房負荷は変わるため、他の地域では数値が異なる可能性があります。
なぜ45年間という長い期間で比較しているのですか?
住宅ローンの返済期間(多くの場合35年)が終わった後も、住み続ける限り光熱費は発生し続けるためです。35年間だけで比較すると、「ローン完済後の負担」が見えなくなってしまいます。
電気代の値上がりは、本当に3〜4%も続くのですか?
将来の電気料金の動向を保証するものではありません。総務省統計局の消費者物価指数(電気代)の実績データをもとにしたシナリオであり、直近5年・4年の上昇ペースを参考にしています。上昇率が低ければ差は小さく、高ければ差はさらに大きくなります。
太陽光・蓄電池を載せれば、性能の差は関係なくなりますか?
関係なくなるわけではありません。太陽光・蓄電池を搭載しても、性能の低い住宅ほど自家消費でまかなえない電力量が多く残るため、性能による差は残り続けます。また、太陽光パネルや蓄電池本体の導入費用・交換費用は、この試算には含まれていません。
住宅性能と光熱費について、もっと詳しく知りたい方へ
MIURAHOMEでは、光熱費シミュレーションを個別にご提示する完成見学会・個別相談を随時受け付けています。
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参考文献
本記事の作成にあたり、以下の情報を参考にしました(すべて2026年8月時点で確認)。
- 気象庁 長崎地方の月別平年値に関するデータ
- 総務省統計局 消費者物価指数(電気代)
- YKK AP株式会社 仕様別日射熱取得率に関する公式資料
- 一般社団法人 日本エネルギーパス協会 空調機器の実効COPに関する資料
- 地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 気密性能と漏気損失に関する資料
- 九州電力株式会社 電気料金プラン「電化でナイト・セレクト」料金表
- Passive House Institute(パッシブハウス研究所) PHPP認定基準
- MIURAHOME 社内施工基準