
断熱等級7とパッシブハウスは何が違う?|長崎で重要な高断熱・高気密住宅の考え方
2026.08.18

結論:断熱等級7は行政の省エネ基準を示す指標、パッシブハウスは民間の国際認証であり、同じUA値でも「何のための制度か」が根本的に異なる
「断熱等級7さえ取れば、パッシブハウスと同じくらい高性能」——そう考えている方もいるかもしれません。数値上は近い水準に見えることもありますが、両者は制度としての目的やプロセスがまったく違います。今回は、その実務的な違いを詳しく整理します。
この記事を書いた執筆者について
三浦 恭輔(MIURAHOME 取締役部長・営業部)
大学院卒業後、都内の設計事務所に勤務し、2023年にMIURAHOMEへ入社。設計事務所でのデザイナー経験を活かし、「美しい空間」「住みよい性能」「安心なライフプラン」の提案を行う。長崎県諫早市を拠点に、パッシブハウス基準の高断熱・高気密住宅を専門に手がける。
そもそも、誰が定めた制度なのか
断熱等級7は、日本の国土交通省が定める住宅性能表示制度の中の一つの区分です。
建築基準法や省エネ法に連動する形で運用されており、BELSや長期優良住宅、各種補助金の要件としても幅広く活用されています。
一方パッシブハウスは、ドイツのパッシブハウス研究所(PHI)という民間機関が運営する国際的な認証制度です。
日本の法律とは独立した民間の仕組みであり、行政の補助金要件として直接使われることは基本的にありません。
制度としての目的が異なる、3つのポイント
断熱等級7とパッシブハウスは、次の3つの点で制度としての性格がはっきりと異なります。
1つ目は、等級7は行政指標であり、補助金・BELSに活用しやすいことです。国内の様々な優遇制度と直接的に連動しています。
2つ目は、パッシブハウスは民間の国際認証であり、第三者証明が伴うことです。設計段階の審査と竣工後の実測提出が、いずれも必須です。
3つ目は、同じUA値でも認証の可否は一致しないことがある点です。評価する項目の範囲が異なるため、数値が近くても結果は大きく変わり得ます。

同じUA値でも結果が分かれる理由
たとえば、UA値0.26という同じ数値の住宅が2棟あったとしましょう。
断熱等級7は、この外皮性能の数値だけで判定されるため、どちらの住宅も等級7の基準を満たすことができます。
しかしパッシブハウスは、窓の配置や日射の取り込み方、気密性能、換気の熱交換率、実際のエネルギー消費量まで含めた総合評価です。
窓の配置が悪く冬の日射熱取得が少ない住宅は、UA値が同じでも、パッシブハウスの暖房需要基準(年間15kWh/㎡以下)を満たせないことがあります。
つまり、断熱等級7は「入口の性能」を測る指標であり、パッシブハウスは「暮らし全体のエネルギー収支」を測る指標だという違いがあるのです。
逆に言えば、パッシブハウス基準を満たす設計であれば、UA値そのものは等級7の基準を上回っていることがほとんどです。窓の日射熱取得まで含めて計算する分、パッシブハウスの方がより厳しい総合評価になっているためです。
こうした違いを理解しないまま「等級7だから安心」と考えてしまうと、実際の暖房需要や光熱費において、想定とのギャップが生まれることもあります。
取得の手間とタイミングの違い
断熱等級7の表示は、住宅性能評価機関による評価書の取得で完結し、比較的取り組みやすい制度と言えます。
一方パッシブハウス認証は、設計段階からPHPPという専用ソフトでの詳細な計算、第三者機関による設計審査、竣工後の気密測定などの実測データ提出まで、複数のステップを経る必要があります。
そのため、認証取得には追加の費用と一定の時間がかかることが一般的です。
どちらを目指すかによって、設計初期段階からの進め方や、住宅会社に求められる専門性も変わってきます。
断熱等級7は建築確認や住宅性能評価の申請フローの中で取得できる一方、パッシブハウス認証は国内外の審査機関とのやり取りが発生するため、対応できる住宅会社が限られているのが実情です。
MIURAHOMEの考え方
MIURAHOMEでは、断熱等級7を上回る水準(UA値0.26以下)を標準としながら、パッシブハウスの考え方を設計の確かな土台に据えています。
等級7という「入口の性能」だけでなく、窓の配置や日射計画まで含めた「暮らし全体のエネルギー収支」という広い視点を大切にしています。
認証取得はお客様のご要望に応じてご提案しており、認証の有無にかかわらず、パッシブハウス基準相当の考え方を設計に反映することを標準としています。
補助金活用を重視される方には断熱等級7やBELSの取得を、国際的な客観性や認証の証明力を重視される方にはパッシブハウス認証の取得を、それぞれのご要望に応じてご提案しています。
どちらの制度にも精通しているからこそ、お客様の目的に合わせた最適な選択肢を、具体的な数値とともにご説明できると考えています。

まとめ
断熱等級7は行政の省エネ基準を示す指標、パッシブハウスは民間の国際認証であり、両者は制度としての目的そのものが根本的に異なります。
同じUA値の数値であっても、評価する項目の範囲が異なるため、結果が一致しないことがあります。
「どちらが優れているか」ではなく、「何のための制度か」をきちんと理解したうえで、自分たちの目的に合った基準を選ぶことが大切です。
補助金活用を重視するのか、国際的な客観性を重視するのか、目的に応じて住宅会社と相談してみてください。
「どちらか一方」ではなく、それぞれの制度の強みを理解したうえで、必要に応じて両方の視点を取り入れるという考え方も現実的な選択肢です。
よくある質問
Q1. 断熱等級7があれば、パッシブハウスも自動的に満たしますか?
必ずしもそうではありません。窓配置や日射計画、気密・換気性能など、パッシブハウス基準は評価項目がより広範囲にわたるためです。
Q2. パッシブハウス認証がなくても、パッシブハウス基準を目指せますか?
可能です。認証取得にこだわらず、PHPP相当の考え方で設計する住宅会社も、少しずつ増えてきています。
Q3. 補助金を活用したい場合、どちらを優先すべきですか?
現時点では、断熱等級7やBELSなど、国内の行政指標に連動した表示の方が、補助金要件として活用しやすい傾向にあります。制度は年々見直されるため、最新の情報を確認することも大切です。
Q4. パッシブハウス認証には具体的にどのくらいの期間がかかりますか?
設計内容や審査状況によって異なるため、実績のある住宅会社に具体的なスケジュールを確認することをおすすめします。工期に余裕を持って計画することが望ましいです。
Q5. 両方を同時に取得することはできますか?
制度上は両立可能です。多くの場合、パッシブハウス基準を満たす住宅は、断熱等級7の基準もあわせて自然にクリアしています。両方の証明書類を残しておくことで、将来的な資産価値の説明にも役立ちます。
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参考文献
- 国土交通省「住宅の省エネルギー基準に関する資料」
- Passive House Institute 関連資料
- 一般社団法人 日本サステナブル建築協会 関連資料