
夏の日射を遮り、冬の日射を取り込む家とは?|長崎で重要な高断熱・高気密住宅の考え方
2026.08.02

結論:夏は遮り冬は取り込む家は、庇の設計だけでなく、方角ごとに遮熱型と断熱型のLow-Eガラスを使い分けることでも実現できる
「夏は涼しく、冬は暖かい家」を実現する方法として、庇や軒の設計はすでによく知られています。しかし、実はそれと同じくらい重要なのが、窓ガラスそのものの種類選びです。今回は、ガラスの選び方という新しい視点から詳しく解説します。
この記事を書いた執筆者について
三浦 恭輔(MIURAHOME 取締役部長・営業部)
大学院卒業後、都内の設計事務所に勤務し、2023年にMIURAHOMEへ入社。設計事務所でのデザイナー経験を活かし、「美しい空間」「住みよい性能」「安心なライフプラン」の提案を行う。長崎県諫早市を拠点に、パッシブハウス基準の高断熱・高気密住宅を専門に手がける。
はじめに
「Low-Eガラス」という言葉を、住宅会社との打ち合わせのなかで一度は耳にしたことがある方は多いはずです。
実はこのLow-Eガラス、大きく分けて2つの種類が存在することを意外とご存知ない方も多いのではないでしょうか。
同じ「Low-E」という名前がついていても、性能の方向性はまるっきり異なります。
Low-Eガラスには2種類ある
Low-Eガラスとは、ガラス表面に特殊な金属膜を薄くコーティングし、熱の伝わり方を精密にコントロールするガラスです。
この金属膜を、ガラスの室外側にできるだけ近い位置に施したものが「遮熱型」です。日射熱を室内に入る前の段階でしっかり反射し、日射熱の侵入を抑えます。
一方、金属膜を室内側にできるだけ近い位置に施したものが「断熱型」です。日射熱を積極的に取り込みつつ、室内の暖かさを外へなるべく逃がしにくくします。
どちらも「Low-E」という同じ名称で呼ばれますが、目的は正反対と言ってもよいほど異なります。
この違いは、金属膜がガラスのどちら側の面に施されているかによって、生まれます。
室外側に近い面に膜があれば、日射が室内に届く前の段階でしっかりと反射されるため、遮熱効果が高まります。
室内側に近い面に膜があれば、日射は一度室内にしっかり取り込まれたうえで、その熱が外へ逃げるのを防ぐ働きをします。
わずかな構造の違いのように見えますが、その効果は窓の方角によって大きく意味を変えることになります。
2種類のLow-Eガラス、方角別の使い分け
この2種類のガラスは、その窓が向いている方角によって使い分けることが基本です。
遮熱型Low-Eガラスは、日射をカットしつつ室内の明るさはしっかり確保できるため、夏の日射が強い西面や東面に適しています。
断熱型Low-Eガラスは、日射を積極的に取り込み室内の熱を逃さないため、冬の日射取得を活かしたい南面にとても適しています。
つまり、方角ごとに種類を丁寧に変えることこそが、性能を最大限に引き出す基本的な考え方になります。

なぜ方角によって使い分けるべきなのか
南面の窓は、冬の低い日射をしっかり取り込むことで、暖房負荷を減らす効果が期待できます。
この大切な南面にうっかり遮熱型ガラスを使ってしまうと、冬に得られるはずの貴重な日射熱までカットしてしまうことになります。
逆に、西面や東面に断熱型ガラスを使うと、夏の強い日射をそのまま室内へ取り込んでしまい、室温上昇の大きな原因になります。
このように、ガラスの種類と方角の組み合わせを誤ると、性能を十分に発揮できないばかりか、かえって逆効果になることもあります。
せっかく高性能なガラスを採用していても、方角との組み合わせをうっかり間違えてしまうと、期待した効果を得られません。
住宅会社の中には、コストや在庫管理の都合から、全窓で同じ種類のガラスを一律採用しているケースも見られます。
その場合、南面では冬の貴重な日射取得のメリットを十分に活かしきれていない可能性があります。
庇や外付けブラインドとの違い
庇や外付けブラインドは、窓の外側で物理的にがっちりと日射を遮る「建築的な対策」です。
一方、Low-Eガラスの種類選びは、ガラスそのものが持つ性能で日射をじっくりコントロールする「素材による対策」といえます。
この2つは互いに対立するものではなく、うまく組み合わせることでより一層高い効果を発揮します。
たとえば、南面に断熱型ガラスと適切な庇をうまく組み合わせれば、冬は日射を取り込みつつ、夏は庇で遮るという理想的な状態に近づきます。
庇だけでは防ぎきれない浅い角度からの日射も、ガラスの遮熱性能によってある程度カバーできることがあります。
逆に、庇の設計がどうしても難しい敷地条件であっても、ガラスの性能をうまく工夫することである程度の効果を補うことも可能です。
建築的な工夫とガラスの性能、どちらか一方だけに頼るのではなく、両方をバランスよくうまく組み合わせて考えることが理想的な窓計画につながります。
MIURAHOMEの考え方
MIURAHOMEでは、樹脂サッシ・日射遮蔽型トリプルガラスを南面中心に配置し、東西面は基本的に大開口を避けるという設計方針を一貫して大切に採用しています。
ガラスの種類と庇の設計、両方の視点から、方角ごとに最適な窓計画をきちんとご提案しています。
設計の段階で、それぞれの窓がどの方角を向き、どんな役割を持つのかを丁寧に整理したうえで、ガラスの仕様を決めています。
見た目や価格だけでなく、性能面でのしっかりとした根拠を持った窓計画を大切にしています。

まとめ
「夏涼しく冬暖かい家」を実現するには、庇の設計だけでなく、窓ガラスの種類選びも決して欠かせない大切な要素です。
遮熱型と断熱型、それぞれの特性をしっかり理解したうえで、方角に応じて上手に使い分けることが重要です。
住宅会社との打ち合わせでは、どちらのタイプのLow-Eガラスを、どの方角にどう採用しているのか確認してみてください。
「Low-Eガラスを使っています」という説明だけで簡単に満足せず、その先の種類まで踏み込んで聞いてみることをおすすめします。
よくある質問
Q1. 見た目でLow-Eガラスの種類を判別できますか?
外観だけでの判別は難しいため、仕様書や住宅会社に直接確認することをおすすめします。
Q2. すべての窓に同じ種類のガラスを使う住宅会社もありますか?
はい、コストや管理のしやすさから統一している会社もあります。契約前に方角ごとの使い分けの有無を確認するとよいでしょう。
Q3. 北面の窓にはどちらのガラスが適していますか?
日射取得があまり期待できないため、断熱性能を重視した仕様が一般的です。冷気の侵入を防ぐことを優先します。
Q4. ガラスの種類でコストは変わりますか?
仕様やメーカーによって差がありますが、大きな価格差にならないケースも多くあります。見積もりで確認しておくと安心です。
Q5. 既存の窓のガラスだけ交換することはできますか?
サッシの形状によっては可能な場合があります。リフォーム時に専門業者へ早めに相談してみてください。
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参考文献
- 国土交通省「住宅の省エネルギー基準に関する資料」
- 一般社団法人 日本サステナブル建築協会 関連資料
- 板硝子協会 関連資料